皆様はどのような商材をマーケティングしておりますでしょうか?
商品やサービスが多様化している現代において、マーケティング活動を消費者である顧客へフィットさせて、施策を行っていくことが非常に重要となってきておりますよね。
その中でも、サービスマーケティングを実践する企業が増えてきております。
サービスマーケティングと聞いて、「サービスのマーケティングでしょ?」と考えられる方も多いかと思いますが、「サービス」にも様々な形があり、それらに沿ったマーケティング活動を行う必要があります。
その為今回は、サービスマーケティングの基礎知識から、フレームワークである7Pについて解説を行っていきますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
サービスマーケティングとは?
サービスマーケティングとは、サービスや商品・製品に付随する機能としてのサービスを対象にしたマーケティングのことを指しております。
昨今の商取引において、サービス的視点は必要不可欠と言われる程重要となってきております。
「サービスの提供」や「商品を販売する」という一般的な販売活動だけでなく、「顧客へサービスをする」ことが非常に重要となります。
ただ、この「顧客へサービスをする」という行為は数値で測れるものではなく、漠然としたものとなってしまいます。その為、目に見えないサービスを、マーケティング視点でしっかりと考慮していくことを「サービスマーケティング」といいます。
現在の国内生産の約70%はサービス関連から、米国においてはGDPの約80%はサービス産業から生み出されており、サービスマーケティングの重要性は高まってきております。
そして、サービスマーケティングでは、単なるサービス業という括りだけでマーケティング活動を行うのではなく、顧客接点のある様々な業種にも該当するマーケティング活動になりますので、しっかりと理解しておきましょう。
サービスの特性の定義
サービスマーケティングにおけるサービスとは、どのようなものが当てはまるのでしょうか?
サービスマーケティングが生まれた背景には、アメリカの経済学者フィリップ・コトラーが提唱した7Pというフレームワークがあります。
そのコトラーが定義したサービスの特性は以下の通りです。
- Intangibility:無形性・非有形性
- Simultaneity:同時性・不可分性
- Perishability:消滅性・非貯蔵性
- Heterogeneity:異質性・変動性
それぞれについて解説を行っていきます。
Intangibility:無形性・非有形性
企業が顧客へ提供している商材には、商品とサービスの2種類がありますが、そのうちのサービスには特定の形がありません。
そのため、有形の商品とは違って、購入する前に手にとってどのような物か確認をしたり、味見をしてみたりすることが出来ません。
なので、サービスを顧客へ伝えていくためには、そのサービスの特徴やメリット等の活用した際に顧客へもたらされる効果を視覚的に理解できるように有形性を高める必要があります。
例えば、美容室などが分かりやすいと思いますが、髪を切り顧客の理想となる髪型にする行為を提供しており、その商材は無形です。そのため、顧客は提供されるサービスを切る前に確認することが出来ないのです。
そのため、カット例やセット例などをホームページ上やSNS上に掲載する等の工夫をすることにより、顧客はイメージがしやすくなります。
Simultaneity:同時性・不可分性
同時性・不可分性とは、生産活動と消費活動が同時に起こるという特性を表しております。例えば、飲食店やホテルなどに関しては、営業時間外にサービスを提供することが出来ません。
さらに、サービスを提供する提供者とサービスを提供される享受者が同時に存在する必要がありますので、人員的・距離的な問題が発生してしまいます。可能な限りこの問題を解決しておくと良いでしょう。
例えば、ワンツーマンのパーソナルジムでは、顧客の数は限られてしまいますが、グループで受講できるようにすると人員的な問題解消に繋がります。
Perishability:消滅性・非貯蔵性
消滅性・非貯蔵性とは、サービスを貯蓄や保管をすることが出来ないという特性を指しております。
その為、需要と供給を適切に管理していく事が重要となります。
例えば、需要が増える繁忙期には供給の量を増やしたり、反対に需要が減る時期は供給量も減らしたりという調整が必要です。
鍋専門の飲食店ですと、繁忙期は冬場になりますので冬場に人員を増やし需要に対応できるようにして、夏場は鍋の需要が減ってしまうため割引クーポンの発行や夏限定メニューの開発などにより需要を喚起するなどをします。
Heterogeneity:異質性・変動性
異質性・変動性とは、サービスの提供する人やタイミングによって、価値や品質が変動してしまう特性を指しております。
その為、価値や品質を一定の水準で維持しつつ提供をしていくことは、とても難しい課題です。
例えば、飲食店を例に上げると、調理スタッフの体調やコンディション、仕入れた食材等によって提供できる料理の味が異なることもあります。
さらに、美容室に関しても、同じ店舗ではあるもののスタッフによって、髪型の仕上がりや美容師のスキルなどには差が生まれてしまいます。
ただ、顧客からすると提供者や提供するタイミングで変動するサービスでは、満足することが出来ないでしょう。
その為、一定の水準を担保できるように業務フローを改善したり、マニュアルを作成したりして、品質の管理を徹底していくことが重要となります。
マーケティングミックス7Pとは
もともと、1960年代に提唱されていた「4P」が広く浸透しておりました。
ただ、1970年代にはサービス産業が増えてきて、そのサービスにも対応できるフレームワークが必要になったのです。
そこで、アメリカの経済学者でありマーケティングの父と呼ばれているフィリップ・コトラーが「7P」と呼ばれるフレームワークを提唱しました。
先程お伝えしたとおり、サービスは様々な要素があり、通常の商品マーケティングと比較しても、難易度の高いマーケティングマネジメントが必要となります。
その為、従来の「4P」に、後に紹介する「3P」を加えたフレームワークが「7P」となります。
マーケティングミックス4P
4Pとは、「製品・サービス(Product)」「料金・価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」を自社と競合他社で比較していき、営業・販売を行なっていく際の詳細を決めていくフレームワークになります。
どのような商品を、いくらで、どういう流れで、どうやって販売するか等の分析が可能となります。
4Pにより、競合他社との比較ができ、その上で自社ビジネスの強みと弱みを明確にすることができ、具体的にどう販売していくかと施作を生み出すことができます。
Product|製品・サービス
製品・サービス(Product)では、自社が販売を行なっていきたい製品やサービスも重要ですが、顧客にとって必要・ニーズのある製品やサービスはどのようなものかどうかを確認します。
Price|料金・価格
料金・価格(Price)では、実際に販売する価格の分析を行います。
営業戦略における価格の設定は、とても重要です。その価格は、適した価格にしなければなりませんが、利益がどのくらい出るか、競合他社の内容と価格の折り合い、価格帯別の顧客層を考え決定していきます。
Place|流通
流通(Place)では、流通の経路や販売場所を分析していきます。
自社製品・サービスのターゲティングにマッチした流通経路や場所を分析していくことが重要です。
Promotion|プロモーション
プロモーション(Promotion)では、販売促進を行なっていくプロモーション施作を分析していきます。
ターゲット層に適した施作を考えなければなりません。営業ですと訪問販売になるのか、テレアポを行うのか、問い合わせフォーム営業をするのか、営業ではなくインターネット広告を行うのか…等様々な方法がありますので、その中で決定しましょう。
マーケティングミックス3P
3Pとは、「人(People)」「プロセス(Process)」「物的証拠(Physical Evidence)」の3つのPを、「4P」に加えることで、「7P」がサービスマーケティングにおいて有効的なフレームワークとなります。
3Pについて、それぞれ解説を行っていきます。
People|人
人(People)では、具体的に「スタッフ・従業員」・「顧客」・「関係する企業」などのサービス提供時に関係する「人」を指しております。
飲食店を例に上げると、静かで落ち着いた雰囲気のレストランを提供したいのに、顧客が騒がしい人ばかりだと望んだサービスにはなりません。
一方、静かな顧客ばかりになったのに店員が横暴な対応を取っていても、顧客からすると求めていたサービスとは違うでしょう。
このように、自社の提供するサービスの内容やコンセプトに沿った環境づくりを、「人」という観点から考えていくことが、3Pの「人(People)」です。
Process|プロセス
プロセス(Process)では、サービスの提供プロセスや体験のことを指しております。
このプロセスでは、大別して2種類の考え方があります。
1つ目が、効率化です。
例えば、マクドナルドやスターバックスコーヒーでは「商品を注文するレジ」と「商品の受け取り場所」は分かれています。分けることにより、注文する顧客の流れをスムーズにすることができ、提供プロセスを効率化することに繋がります。
そして、2つ目が体験の提供です。東京ディズニーランドなどのテーマパークでは、顧客は待ち時間が必ず発生してしまいますが、その待ち時間ですら楽しんでもらえるように工夫しております。このような、一連のプロセスを効率化するだけでなく、体験を提供することで、顧客満足度を向上させることも可能です。
Physical Evidence|物的証拠
物的証拠(Physical Evidence)では、様々な要素を持っております。
1つ目は、サービスの価値や質などに影響を与える環境を指すこともあります。
例えば、テイクアウトをできる飲食店が増えてきておりますが、テイクアウトして自宅で食べるのと、店内で食べるのとでは料理に大差がなかったとしても、様々な差が生まれます。店内で食べると通常とは違った非日常感を味わえたり、自宅で食べると外出時と比べて気を楽にして食べられたりと環境によってサービスの価値や質が変わります。
2つ目は、サービスの提供する際の演出物(装飾やツールなど)を指す場合もあります。提供しているサービスは無形のものとなりますので、体験の記憶に残るようにこの物的証拠を工夫する必要があります。
例えば、東京ディズニーランドであれば、「顧客全てをVIP対応するため出入り口を赤の絨毯にする」や「東京ディズニーランド内から外の景色を見えないようにする」などの要素を工夫することにより、顧客の体験の記憶により残りやすくしております。
3つ目としては、サービスの安心安全保証を提供することです。
例えば、食に関して言えば、生産者を記載するトレーサビリティや、サービスの契約書等が該当し、顧客の不安要素を取り払うために工夫をします。
最後に
サービスマーケティング7Pを活用することにより、サービスを提供している企業だけでなく、幅広い業種業界のマーケティング活動を促進していくことが出来ます。
現状では特に、様々な業種で価格競争が激化しており、「商材の単価を下げる」しかないと考えている企業も少なくないかと思いますが、サービスを見直し改善することで、価格を落とさずに、他社との差別化を行えるようになるでしょう。
その為、7Pを活用して、自社のサービスについてより深く考えていくとともに、顧客にとってどのようなサービスを求めているのか等の価値や質を数値や言語化して考えていきましょう。
そうしてPDCAサイクルを回し、サービスマーケティングを改善していくことで、戦略的にビジネスを推進していくことができます。