カスタマージャーニーという言葉を聞く機会が増えてきましたが、正しく理解しておりますでしょうか?
顧客やペルソナの商材購買までの流れを可視化することを指しております。
顧客の心理や感情などを理解できているかどうかは、マーケティングを行う上でとても重要な要素となっており、その反面理解できていない場合、特定のタイミングで顧客へどのようなメッセージを伝えたらよいかが分からないため、成果に繋がるマーケティング活動を行うことが難しいです。
今回の記事では、そのような顧客の内側を理解するためによく活用されているカスタマージャーニーについて解説を行なっていきます。
カスタマージャーニーは今や、マーケティング活動だけでなく、UXデザインや製品の開発など様々な領域で活用されとおりますので、ぜひご参考にしていただけれ場と思います。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーは、もちろん英語なのですが、日本語に直訳すると「顧客の旅」となっており、顧客やペルソナの購買までの一連の動きの流れを可視化したものとなっております。
可視化することにより、顧客接点を確認することができ、それぞれの最適な情報を伝えていくことが可能となります。
数十年前まで、主なメディアはテレビや新聞、ラジオ、雑誌などでした。その頃は、ペルソナ設定をし、顧客接点を想定することが重要とされておりましたが、現在は顧客がマルチチャネルを活用し、情報収集や購買活動をしておりますので、顧客の全ての行動を把握することはとても難しくなっております。
ただ、その反面技術の進歩により、検証や取得、分析できるデータの質は向上しデータ量も増えておりますので、精度の高い行動や活動を可視化できるようになりました。そして、アドテクノロジーやMAツールなどの技術も進歩しておりまして、チャネルを横断している顧客単体に対してマーケティング活動を行えるようになったのです。
カスタマージャーニー作成のメリット
それでは、カスタマージャーニー作成のメリットについて解説を行なっていきます。
より深く顧客理解ができる
マーケティング活動を行う上で、顧客理解は必要不可欠です。
ただ、顧客の購買プロセスの中で、どのように自社の商材を購入しているかというイメージを正確にできておりますでしょうか?
ウェブサイトやアプリケーションを分析したり、顧客へアンケートを行なったりすることにより行動を断片的に把握できたとしても、顧客の行動を全て理解することはとても困難です。
ただ、カスタマージャーニーを作成することにより、顧客やペルソナの購買までの一連の動きの流れを可視化し、その行動全てをストーリーとして表現しますので、より深く顧客理解をすることができます。
顧客視点で考えることができる
行動の全てを可視化することにより、顧客視点で考えることができ、顧客に沿ったマーケティング活動を行えるようになります。
ただ、顧客視点で考えず、何となくマーケティングを行なっていると成果には繋がりませんし、インタラプション・マーケティング(顧客の行動を中断させてマーケティングを行うこと)と思われてしまいます。
例えば、飲食店がホームページ(メニューを確認し予約できるサイト)をリニューアルしたいという場合、予約サイトという顧客接点だけで考えるのは不十分となります。なぜかというと、顧客はそのサイトに行き着く前にホットペッパーグルメや食べログ、その他のサイト、知人へ聞くなど、複数の顧客接点を経由している可能性が高いため、そこを加味して考えることにより、ホームページで顧客に伝えるメッセージや役割が大きく変わってきます。
マーケティング活動で迅速かつ的確な意思決定が可能
カスタマージャーニー作成時には、そのマーケターだけでなく、営業担当やサポート担当、開発担当などの複数の組織を横断したチームを構成し、カスタマージャーニーマップを作成していきます。
このような複数のメンバーを巻き込んでから、顧客やペルソナの行動を可視化することはとても効果が高く、顧客の行動への共通の認識を作ることにより、今後のマーケティング施策立案などの意思決定を素早く的確に行えるようになります。
例えば、MAツールを活用して、メールマーケティングを行う際に、カスタマージャーニーを作成して行うと、各顧客接点でどのようなメッセージを送るべきか把握できるため、とてもスムーズに進めることが可能となります。
カスタマージャーニーマップ作成方法
ここから、カスタマージャーニーマップを作成する方法について解説を行なっていきます。
流れとしては以下のように進めていきます。
- ペルソナ設定
- カスタマージャーニーマップのゴールを定義
- カスタマージャーニーマップのフレーム設定
- 顧客の情報を収集
- マッピング
- 直感的に分かるようにする
① ペルソナ設定
最初に対象となるペルソナの設定をしていきます。
ペルソナがなければ、カスタマージャーニーマップを作成することができませんので、必ずペルソナを設定しておきましょう。
ペルソナは、マーケティングの概念で「商品やサービスの典型的なユーザー像」のことです。わかりやすくお伝えすると、「自社商材を買って欲しい顧客の特徴」になります。
詳しくは、そのユーザーを想像上で、年齢や性別、居住地、職業、年収、趣味、価値観、家族構成、ライフスタイル等を実在しているかのように詳細なデータの設定をしていきます。
② カスタマージャーニーマップのゴールを定義
次にカスタマージャーニーマップのゴールを定義していきます。
ゴールは、資料請求や問い合わせ、商品・サービスの購入などを設定していきますが、その範囲をどこまでにするかによって、今後情報収集する内容・マーケティング施策が変わりますので、最適なゴールを設定していきます。
③ カスタマージャーニーマップのフレームを設定する
カスタマージャーニーマップの作成には、情報収集や収集した情報をマッピングするためのフレームを設定する必要があります。
よく使用されるフレームは、X(横)軸に興味関心や商品・サービスの認知、購入などの顧客の購買プロセスを設置して、Y(縦)軸に顧客接点、顧客の行動、思考、感情、課題、課題解決のための施策等をマッピングしていくフレームになります。
④ 顧客の情報収集
ゴール・フレームを設定したら、次に顧客の情報を収集していきましょう。
顧客は顧客接点の際に、どのような思考・感情を持っていて、どんな行動をしているかを考えていきます。
この情報収集では、まず社内にある情報から収集します。
情報収集では、定量調査と定性調査の二つで行なっていきます。定量調査は、オフラインとオンライン両方のデータを分析・検証していく方法で、定性調査は顧客へアンケートやインタビュー、テストなどを行うことで調査する方法になります。
BtoBの企業であれば、以前問い合わせしてきた情報やCRM・SFA内にある商談情報や受注履歴、イベントなどでのアンケート結果、商材導入後の満足度アンケートなど様々な情報を保有していると思いますので、保有データを分析します。
そして、もしデータが足りない場合は、市場調査や顧客インタビュー等を行い、情報を収集していきます。
⑤ マッピング
情報収集が完了しましたら、設定したフレームに沿った形で、顧客情報(思考・行動・感情等)をマッピングします。その際に、様々な部署や立場の異なる役職などを横断しているメンバーでチームを組み、ワークショップ形式(お互い協力し合い、設定されたテーマを元に展開していく形式)で進めることをお勧めします。例えば、役員などの経営層やマーケティング担当、営業担当、カスタマーサポート、開発担当など、違う視点から意見が出るようにして、カスタマージャーニーマップの作成を行なっていくと、生産的に進めていけます。
ファシリテーターは、作成する目的や各メンバーへどう影響するか、全体的な進め方を説明し、大区分である「チャネル」「顧客接点」や「顧客の行動」、「顧客の思考」、「顧客の感情」、「課題と解決策」等を紙などに分け、各情報を付箋などで貼っていきます。
⑥ 直感的に分かるようにする
マッピングが終えましたら、情報を整理して、各情報を顧客のストーリーとして関連づけていきます。図やイラストなどを使用すると、誰でもすぐに理解できるため、お勧めです。
カスタマージャーニーマップの注意すべきポイント
妄想になってしまう可能性がある
一番に注意すべきポイントとしては、担当者の理想としている妄想になってしまう可能性があるということです。担当者が「このように動くだろう」、「顧客にこうしてほしい」と考え、その妄想が色濃くマップに反映されてしまいますと、うまく運用できないです。
そのため、主観は一切入れず、収集している情報・データに基づいて、情報をマッピングしましょう。その際には、ファクトベースで行います。ファクトでない点につきましては、今はマッピングせず、検証や調査を行って判断するように徹底しましょう。
初めから詳細に作成する
作成方法で説明した通り、カスタマージャーニーマップ作成は、簡単なものではありません。行動を確認できるような情報やデータを収集する必要があり、社内に情報・データが少ない場合、成果に繋がるカスタマージャーニーマップの作成は不可能です。
ただそれでも、一度作ってみましょう。
そうすることで、作成の過程で自社に足りない情報・データが何か明確に把握することができるでしょう。初めから、綺麗で正確なカスタマージャーニーマップを作成しようとすると、分からないまま情報収集をすることになり、後から足りないものが判明したり、やり方が違っていたりと二度手間になってしまう可能性が高いです。
そのため、まずは自社で分かる範囲で作成をしてみて、改善をしていく方がスムーズに進めていけるでしょう。
ブラッシュアップ・バージョンアップをしない
昨今では、顧客の購買プロセスや情報収集などの活動がとても変化しやすいです。
そのため、カスタマージャーニーマップを作成しても早くて数ヶ月、長くても1年経過すれば、部分的にでも現実との乖離が発生してしまうでしょう。
なので、半年や1年などの定期的にカスタマージャーニーマップ改善を行ない、ブラッシュアップを行います。その際に、全体的な流れが違うということが判明しましたら、バージョンアップを行ないましょう。仕組みや担当を作っておくと効率よく回せるでしょう。
カスタマージャーニーマップの具体例
それでは、最後にカスタマージャーニーマップの例を2つ挙げたいと思います。
ここでは、初級者でも真似できるようなシンプルなマップをふたつ紹介したいと思います。
カスタマージャーニーの作成では、深く考えている方が多いのですが、そこまで難しく考えなくても大丈夫です。
x(横)軸にフェーズを置いて、各フェーズでの顧客の行動や思考などについて考えていきます。
上記の例は、とてもシンプルにまとめられています。
フェーズごとに「顧客接点で顧客が取る行動」、「その際の顧客の思考」、「自社が取るべきアクション」の3つを設定しています。
ここは、同じようなマップを作成して、自分たちで分かるところ・思いつく範囲で書き出していきましょう。
この例では、フェーズが「商品を探す」、「商品を購入する、「商品を利用」、「商品を評価」と分けて作成されておりますが、ここは自社のビジネスモデルによって変更しましょう。
2つ目のカスタマージャーニーマップもシンプルに設定されております。
こちらは、X(横)軸のフェーズを「遊び場所を探す」、「遊ぶ場所を決定」、「遊ぶ場所にいく」、「遊ぶ」と分けており、Y(縦)軸を顧客の「行動」、「思考/感情」、「インサイト」で設定しております。
顧客がどのようなことを本当は求めているかという点を考えております。
こう見ると、意外とシンプルでも大丈夫なのかと思いますよね。
注意すべきポイントでもお伝えしましたが、まずは作ってみる、そしてブラッシュアップをしていくという流れで進めていくと、スムーズに作成できますので、シンプルにでも一度作ってみましょう。
最後に
今回は、カスタマージャーニーについて解説を行っていきました。
カスタマージャーニーって、マーケティングを行っているとよく聞きますが、あまり詳しく知らなかったという人も多かったのではないでしょうか?
実際、カスタマージャーニーを作成して活用すると、最適なマーケティング施策を立案でき、売り上げなどの成果につながりますので、作成しておくと良いでしょう。