
営業活動を効率よく行なっていき、売れる営業マンになるためには、営業におけるテクニックや身だしなみ、スタンス等が重要かと思われますが、それだけではなく「営業のセンス」も必要となってきます。
なかなか業績が伸びず、その原因が営業活動によるものであれば、営業マンの営業力や営業スキル、センスをどのように改善して伸ばしていくかが課題として考えている企業も多いです。
そのような課題を抱える企業や、営業センスを伸ばしていきたいと感じている営業マンに向けて今回は営業センスの詳細を解説していきます。
センスは、生まれ持ったものではなく、創造することもできますので、営業活動を効率的に行なって業績を伸ばす一つの手段としてご活用いただければと思います。
営業センスとは

営業にはセンスというものがあります。
この営業センスを持っている営業マンは、その営業センスを上手く活用して営業活動を行なっており、営業センスを持っていない営業マンと比べて営業業績が良い可能性が高いです。
実際に、営業コンサルティング会社である株式会社カーナープロダクトが営業マンに行なった意識調査では、全体の約9割近くの営業マンは「営業センスが重要である」と答えております。
(参照:9割が「営業センス」を重要視している)
ただ、一般的なセンスを想像すると、センスは先天性のものとなっており、限定的な一部の営業マンにのみ備わった能力だと考えられるでしょう。
コミュニケーション能力等のセンスに関しては、先天性のものや育った環境によってセンスを持っているケースも実際にありますので、限られた人にしかないというのは間違いではありません。
ただ、営業センスにおいては今後磨いたり意識したりすることで自分にも身につけることが可能なものです。
その営業センスとは、具体的にどういうものなのかについて解説していきます。
営業センスは営業スキルとは違う?

営業センスと似ている言葉として営業スキルがあります。
その営業センスとはどう違うのでしょうか?
営業スキルとは、営業を効率的かつ効果的に行なっていくために重要となる能力を指しています。
具体的には、顧客と円滑に会話を行うためのコミュニケーション能力、課題やニーズを引き出すヒアリング能力、顕在的・潜在的な課題を発見するための課題発見能力、論理的観点で情報や状況を整理して答えを導き出すロジカルシンキング能力、迅速かつ最適な顧客対応を実現する対応能力、外的要因によるストレスに対する抵抗力であるストレス耐性能力などの、様々なスキルがあります。
参考:03/営業マンの基本【トップ営業マンになるための方法(営業に必要なスキル・営業トークについて解説)】
営業スキルが上記のように言語化できるのに対して、営業センスは具体的に言語化して説明することが難しいです。
そもそもセンスとは、「物事の感じ・味わいを微妙な点まで悟る働きや感覚」となっており、営業センスは営業における感覚や働きです。
具体的には、どのようなことかと言いますと
「この顧客は、商品の導入に対して前のめりになったから、〇〇の話をしたら受注できそう」や「△△の際に反応が薄く、△△にネックを感じている可能性が高いから□□のことを話せばネックを無くせそう」等の、営業の成功率を上げられるポイントや顧客の反応から読み取り、察知できる感覚のことです。
この営業センスでは、大別して「先天性営業センス」と「後天性営業センス」の2つに分けられ、それぞれについて解説を行います。
営業センスの種類

先天性営業センス
先天性営業センスとは、先天的や育った環境によって培われたセンスが営業に活用できる感覚・働きであったセンスのことです。
例えば、顧客と素早く信頼関係を構築できやすいセンスや、課題やニーズについて相談したくなるコミュニケーションのセンス等があります。
この先天性営業センスを持っている営業マンは、その営業センスを意識的・無意識に活用して営業活動を行なっており、業績を上げやすかったり、成果に繋がらなかったとしても課題やニーズを引き出したり、信頼関係を構築したりすることが可能です。
ただ、この先天性営業センスを持った営業マンは、その感覚で行動している場合が多く営業が成功した際のノウハウやナレッジを組織に対して共有することができないことが多いです。
センスがなければ同じ行動を行なっても上手くいかない等、再現性が低いことが課題になるでしょう。
後天性営業センス
反対に、後天性営業センスに関しては、営業センスというより営業スキルやテクニック、経験を積み重ねていくことにより、生まれたり磨いたりする感覚・働きのことを指します。
この後天性営業センスが生まれるきっかけや行動に関しては、具体的にトップ営業マンに同行・真似をする、本を読み実践してみる、セミナー・ウェビナーで学ぶなどがあります。
そのような体験や経験、挑戦を行うことにより、その場の感覚を研ぎ澄ますことができ、言動がどう作用するのかを分析することによりセンスが生まれたり、磨かれたりします。
例えば、顧客が製品に対して前のめりになっているかを判断できるようになるには、今までの営業活動での経験に基づいた感覚による判断の精度を高めるほかありません。
その他の営業センスに関しても同じように、経験や体験等に基づき「ここが課題の可能性が高いな」や「あと一歩で受注できそう」という感覚が生まれてきますので、そのセンスを磨いていき精度を高めていきましょう。
この後天性営業センスは、先天性営業センスと比べて突出したセンスや能力を開花させられるとは限りません。ただ、上記のようにしっかりと継続して努力を行なっていくことで、センスがない営業マンでも身につけることができ、結果へと繋がっていきます。
そして、自身で実践をしてきた方法がセンスへとつながっているため、ノウハウ等も共有しやすいという点がメリットになります。
営業センスを持っていない人の特徴

次に営業センスを持っていない営業マンの特徴を紹介していきます。自分に当てはまるかチェックしてみましょう。
自分ばかりのコミュニケーション
コミュニケーション能力はとても重要な能力ではありますが、自分ばかりの会話はよくありません。
そうと分かっていて相手に質問をするものの、回答が端的で結果的に自分が多く話す状況の営業マンも多いでしょう。
ただ、それは相手が悪いのではなく、質問をする内容や前後のトークが影響している場合がほとんどです。そして、自分ばかり会話していると相手は退屈に感じ、ストレスとなってしまい、成果には繋がらないでしょう。
目安としては、「8(相手):2(自分)」を意識してコミュニケーションを取りましょう。
そのためには、話す能力だけでなく、ヒアリング力も高めることで、相手が話しやすい質問ができ、円滑なコミュニケーションを行うことができます。
結論がわからない話し方
これも営業センスのない営業マンに多い特徴です。
説明を長くしているものの、結果何を言いたいのか・何について今話しているのかがわからない営業マンはその時点で頼りにならないと判断されてしまいます。
その原因は、「自分の中で話がまとまっていない」か「無理に話したいトークへ持っていこうとしているか」の場合が多いです。
顧客とのコミュニケーションは、営業ロープレと違い想定外の話をしなければならない場合もあります。そのような場合にこの結論がわからない話し方になる場合が多いでしょう。
ただ、改善策として、普段からはじめに「結論」を話し、その結論に至る理由として「起→承→転→結」という順序で話していると、どのようなトークテーマであっても端的にわかりやすく伝えることができます。
知り合いや職場、家族との会話にまず取り入れていくことをお勧めします。
顧客の話を聞いていない・否定する
意外と多い営業マンが、顧客の話を聞いていない・否定する営業マンです。
誰がどう見ても、この特徴をもった営業マンから買いたくないですよね。
話を聞いていないというのは、顧客の話している内容を聞き流しているというわけではなく、顧客が望んだ回答を提示していない事や話の流れに逆らった営業トークをする事などが当てはまります。
そして否定するということは、顧客が間違ったことや否定的なことを言ってきた際に、「いや、そうではなく…」等の否定語から返すことを指します。
これら2つは、顧客からするとストレスになってしまいます。
ストレスを与えてしまうと顧客からの信頼を失ったり、課題やニーズも引き出せなくなったりし、失注する可能性はとても大きくなってしまいますので、気をつけましょう。
営業センスを持っている人の特徴

それでは、続きまして営業センスを持っている営業マンの特徴について解説をします。
営業センスを持っている営業マンは主に4つの特徴を持っております。
課題やニーズをしっかりと把握できる
まず、営業センスを持っている営業マンは、顧客の課題やニーズをしっかりと把握することができます。
顧客の課題やニーズを把握することは、誰にでもできることではありません。
相手との信頼関係やコミュニケーションの内容、反応等を見て把握をする必要があり、多くの営業マンはこの課題やニーズをしっかりと把握できないまま営業活動を行なっています。
そして、表面的(顕在化した)な課題やニーズに合わせた提案を行い、失敗をしてしまうという典型例となってしまいます。
課題やニーズは必ずしも顧客が理解しているわけではなく、潜在している可能性もありますので、状況や企業を深く分析して気づかせるテクニックも必要で、難易度はとても高いプロセスと言えるでしょう。
ただ、営業センスを磨いている・持っている営業マンは、わずかな反応やヒアリング力によって、顧客の分析や想定を行うことができ、結果的に課題やニーズを引き出すことも可能となります。
伝える能力が高い
次に営業活動でもっとも重要と言える「相手に伝える能力」が高いのも特徴です。
この伝える能力というのは、単に相手にわかりやすく伝えるというだけでなく、最適な言葉と内容でトークをして相手を納得させる力を指します。そのためには、コミュニケーションの能力だけでなく、知識が必要となります。
具体的には、商材の知識・顧客情報・市場の動向・競合他社の知識等です。
営業センスを持っている営業マンは、これらの知識を最適なタイミングで、最適な内容をピックアップし、わかりやすく伝えることができます。
その結果、顧客が納得したり、信頼度が上がったりし成果へ繋がりやすくなります。
そのため、コミュニケーション能力とは別に、情報収集能力も備えて、トークに上手く組み込める力があると、センスのある営業マンと言えるでしょう。
信頼関係構築が上手い
何度かお伝えしておりますが、営業センスを持っている営業マンは顧客と信頼関係を構築することに長けています。この信頼関係は、営業活動においてとても重要な要素となりますので、その関係構築を上手く行えることは、大きなアドバンテージと言えるでしょう。
営業活動において、信頼関係を構築する方法はいくつかありますが、主に以下のようなテクニックを活用すると良いでしょう。
- 第一印象と身だしなみをしっかり整える
- マナーを意識して気をつける
- ミラーリング等の心理的テクニックを活用する
- 相手に役に立ちそうな情報を随時提供する
- レスポンスは早く、約束は厳守する
今回は端的にお伝えしましたが、上記のようなことを意識して行なっていきましょう。
顧客を動かす力が強い
いくら身だしなみやマナーがしっかりしていて、商品・サービスの説明もしっかりできる営業マンでも、顧客を動かす力がなければ成果にはつながりません。
顧客を動かすとは、具体的に商談の場であれば、「購入させる」ことで、アポイント獲得時では、「商談の場をもらう」ことになります。
このように、顧客を動かせるかどうかによって、営業の業績が変わるといっても過言ではないほど重要なポイントになります。
では、どうすれば顧客を動かせるのかお伝えします。
いくつか方法はありますがすぐに実践できる方法として、「商品・サービスを導入した後の未来を想像させる」ことです。こう聞くと難しいように感じますが、メリットだけでなく、ベネフィットを伝えることで簡単に解決することができます。
ただ、ベネフィットを伝えるためにも、上記で伝えた「課題やニーズ」をしっかりと把握しておく必要がありますので、把握した上で、課題やニーズに沿ったベネフィットを伝え、顧客を動かしていきましょう。
今からでも出来る営業センスを身につける方法

それでは、最後に営業センスを生み出す・磨く方法について解説をしていきます。
先天性営業センスを身につけるのは困難ですので、後天性営業センスを身に着け、磨いていくことにフォーカスした内容となります。
後天性営業センスは、主に下記3つの方法を実践することにより生み出し、磨いていくことができます。
- トップ営業マンから学ぶ
- 自身で経験する
- セミナーや本から学ぶ
それぞれについて解説をしていきます。
トップ営業マンから学ぶ
この方法は、そのままの意味となっております。
会社にいるトップの成績を出している営業マンに同行したり、ロープレをしたりすることにより、そのセンスを学んでいく方法です。
1ヶ月だけトップの成績の営業マンではなく、ある程度の期間成績を維持できている営業マンから学びましょう。
主に以下のような方法があります。
- トップ営業マンの商談に同行する
- トップ営業マンの営業トークの録音音声を文字に起こす
- トップ営業マンにロープレをしてもらう
自身で経験する
自身で経験した内容を元にセンスを生み出していく方法もあります。
この方法は、とても効果的ですがそれなりの時間がかかるというデメリットもあります。
具体的には以下のようなステップで実施していきましょう。
- 現状の営業トークや活用しているスキル・テクニックを把握・分析する
- プロセスごとに分岐点を作成して、実行していく
- PDCAを回し、改善点の洗い出しと課題の発見をする
- PDCAに基づき改善し①に戻る
こう見ると、マーケティングのように感じますが、戦略的に営業活動を行うことがとても重要となります。戦略的に行う事で、意図のある行動ができ、顧客がその意図に合致しているかを直接確認することができます。
そうすることにより、顧客の反応を客観的に分析でき、その結果センスとして自分自身で判断するようになります。
ただ最初にお伝えした通り、とても時間がかかる方法となりますので、前述したトップ営業マンから学びながら自身でも経験をしていくと良いでしょう。
セミナーや本から学ぶ
セミナーや本から生み出していく方法もあります。
例えば、セミナーで登壇する先生は、営業に精通した優秀な営業マンのことが多く、その言葉や、内容から学べることはとても多いでしょう。
そしてセミナーによっては、直接指導してもらえたり講師の営業を見ることができたりすることもでき、自社で学べる内容とはまた違った視点で学ぶことが可能です。
本では、営業で活用できるテクニックやスキルが書いているビジネス書や、営業活動のトレンドや雑談で活用できる話題を知れる雑誌も多くあり、多岐に渡った知識を得ることができます。
ただ、学んだだけではセンスとして生み出すことはできませんので、学んだ内容を自身で実践して経験をすることは必須となりますので、注意しましょう。
最後に
今回は、営業スキルについて詳細をお伝えしてきました。
営業スキルは、限られた人のみの能力だと諦めていた営業マンもいたかと思いますが、今回の記事でそうではないと分かっていただけたのではないでしょうか。
営業マン自ら、センスを生み出すために活動を行なっていくことも重要ですが、会社がそのような環境を用意してあげることも重要です。
勉強会を開いたり、外部セミナーに参加したりと会社単位で行なった方が組織的な営業力向上にもつながりますので、ぜひ実践してみましょう。