クロスセルという言葉を聞いたことはありますでしょうか?
営業職の管理者やマネージャーの方は、何度も耳にしていたり、自社でも積極的に行っていたりするかと思います。
今では、認知度も高くなってきた営業・マーケティング手法の一つとなります。
似ている言葉でアップセルというのもありますが、どちらも顧客の単価を上げることができLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を向上させるためにとても重要な手段となります。
今回は、クロスセルについて概要やメリット・デメリットも含めて詳しく解説を行なっていきます。目標達成や業績アップの大きな力となりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
目次
クロスセルとは?
クロスセルとは、既に自社の商品やサービスの購入を検討している企業に対して、全く別の商品・サービスを提案して一緒または単体で購入してもらう営業手法となります。
冒頭でもお伝えした通り、セット販売を促すことができますので、顧客あたりの単価を増やすことに繋がり、LTV向上を目的として行います。
その提案する別の商品・サービスは、もともと提案をしていた商材の補助としての役割を担うものなど、顧客の課題やニーズに沿う形で提案をするのが一般的です。
例えば、AmazonなどのECサイトで買い物をしている際に「同じ商品を購入している方はこちらも購入されています」と類似商品や補助的な商品がレコメンドされることがあると思いますが、それはまさにクロスセルを狙った戦略といえます。
アップセルとの違い
次に、似ている言葉であるアップセルとの違いについて解説を行います。
アップセルとは、商談・取引中のものより、上位の商品・サービスを提案して単価を上げる手法のことです。
アップセルの目的としては、顧客単価の向上です。
現在使っているスマホより、高性能で最新のスマホを販売したり、サブスクリプションサービスで月額1000円のプランから上位の2000円のプランに切り替えてもらったりすることがアップセルになります。
アップセルは商談・取引中の商品・サービスをより高単価のものへと切り替え顧客単価を向上させるのに対して、クロスセルは商談・取引中の商品・サービスとは違う商材を販売して顧客単価を向上させるというわけです。
クロスセルのメリット
それでは、クロスセルのメリットについて解説を行なっていきます。
顧客単価向上
まずは、前述でもお伝えした通り、顧客にセット販売を促し受注できた場合、顧客の単価を向上させることができます。
例としてお伝えしたECサイトのように、類似商材や関連している商材を提案することにより、セットで購入してもらえる可能性は上がり、1回の商談で受注できる単価を向上させることが可能となります。
LTV(顧客生涯価値)の向上
こちらもお伝えした通り、LTVの向上に繋がります。
LTVとはLife Time Valueの略で、顧客生涯価値という意味を持っております。言葉通り、顧客から生涯に渡り得られる価値(利益)という意味です。
営業やマーケティングにおいてこのLTVはとても重要な要素となっております。いかに顧客にメリットを与え、自社の利益を最大化させるかを工夫してビジネスを行なっております。
しっかりと、顧客のニーズや課題に沿った内容の提案であれば、顧客からすると「解決策が豊富で、自社の為に提案を考えてくれている」と信頼を獲得することに繋がります。
そうなると、購買意欲が向上し、解約率も低下しますので継続受注が見込めるというわけです。
顧客を増やさないまま売上向上ができる
営業やマーケティングにとって、顧客数はとても重要です。
ただ、顧客数を増やすことは重要な分、簡単ではないです。そのため、売上を上げるために顧客数を増やすことに悩まれている企業は多く存在します。
ただ、クロスセルを行うことにより、顧客単価を増やすことができますので、顧客数を増やさずに売上を上げることができます。
さらに、一度自社商材を導入している企業は、別の商材を受け入れやすくなる傾向があります。それは、導入時に一定の信頼関係を構築しているため、その他の商材でも成約率が高いということです。
今まで同じ顧客数を獲得しても今まで以上に売上を上げることができますので、リソースの改善や営業プロセスの見直しなどを行うことができるでしょう。
クロスセルのデメリット
それでは、反対にクロスセルのデメリットについて解説をしていきます。
関係性悪化
まず、クロスセルを適切な方法で行わなかった場合、関係性が悪化する可能性があります。理由としては、顧客の意に沿わない商品・サービスの提案だった場合、押し売りをされていると思われることがあるからです。
そして、関係性が悪化してしまいますと、現在契約している商品・サービスの解約などにつながる場合もあり顧客離れしてしまいます。
クロスセルは、メリットも大きい分しっかりと方法を理解して行っていく必要があるのです。
顧客が判断を迷う可能性がある
クロスセルを行うということは、提案をしている以上の取引金額になるということですので、契約をするかどうかという判断を迷ってしまう可能性があります。結果として、購買まで時間がかかり、購買意欲が低下し、失注となるケースもあるでしょう。
クロスセルでは、提案している商品・サービスの関連している商材や類似商材を提案して、両方受注することになりますが、提案する内容によっては上記のように判断しにくい場合があります。
例えば、iPhoneを販売している営業マンがクロスセルを行うのであれば、スマホケースや保護フィルム、Bluetoothイヤホンなどが成功しやすいでしょうが、iPadなどのタブレットやパソコンなどをクロスセルで販売しようとすると失敗する可能性が高いです。
それは、ニーズに合っていないからという理由もそうですが、金額的な要因も大きいでしょう。
このような状況にならないように、顧客に沿った提案をするという大前提のもとクロスセルを行なっていきます。
クロスセルを成功させるための必須事項
クロスセルを成功させるためには、必ず行わなければならないことがあります。
その必須事項を詳しく解説していきます。
情報収集
まず、クロスセルを行う顧客の情報を収集しなければなりません。
情報を持っていない状態でクロスセルを行いますと、顧客に沿った内容の提案を行えませんので、下記の内容は最低限押さえておきましょう。
- 自社の商品・サービスを選んだ理由
- 同様の商品を以前に利用していたか・利用していた場合は企業と理由
- 競合他社の動向
- 顧客の目標や課題・ニーズ
収集した情報を分析
収集した情報を分析します。
営業マンは、苦労して獲得した・戦略的な営業で獲得できた顧客のアプローチ内容や顧客情報など詳細に覚えていることが多いのですが、反対に誰でも受注できるようなラッキーな顧客に関しては、覚えていなかったり、深く掘り下げなかったりします。
詳細を覚えていて情報を持っている顧客に対しては顧客に沿った提案をすることができますが、情報がない顧客については分析を行わなければ、営業マン目線で考えた提案しかできないでしょう。
そのため、どのような顧客でもしっかりと分析を行なって、効果的に進めていく必要があります。
クロスセルの具体的な方法
それでは、クロスセルを実際に行う際の具体的な方法について解説を行なっていきます。
前述まででお伝えした通り、顧客の意に沿わない提案をしても効果的なクロスセルを行うことができませんので、今回紹介する3ステップを意識してクロスセルを行い質の高い営業活動を行っていきましょう。
①LWP分析を活用して顧客の状況を把握
まずは、クロスセルで活用できるフレームワークの「LWP」を活用して顧客の状況を把握していきます。
LWPは、「List:顧客リスト」・「What:行動内容」・「Pace:頻度」の頭文字をとった言葉となっております。以下の内容を参考に、マッピングを行っていき、クロスセルの対象顧客を把握していきましょう。
List:顧客リスト
最初に、顧客リストを確認して、対象となりそうな顧客を抽出していきます。
この顧客抽出が間違っていると、その後の分析が無駄になってしまいますので、注意が必要です。
What:行動内容
ここでは、自社や顧客の行動内容・接触内容を指しております。
そのため、今までの行動内容を確認して、各顧客のポテンシャルを把握して、大中小などのタグをつけていきましょう。
内容に関しては以下のようなことを確認します。
- 自社の提案に対して顧客がどのような反応を示したか
- 直近の取引(特定期間の購買行動)
- 顧客の課題やニーズ
Pace
最後に顧客との接触頻度を抽出していきます。
営業マンが各顧客とどのくらいの頻度で接触しているのか、その際のリアクションはどうか、などといった詳細を数値化・タグをつけて把握していきます。
②顧客優先度をつけていく
LWPでの分析が終了しましたら、抽出した顧客の優先順位をつけていきます。
その際には、マッピングしていくと視覚的に把握できるでしょう。
おすすめとしては、「取引拡大の余地」、「取引実績」の2軸でマッピングする方法です。
A〜Dの順番に優先度が高い顧客ということになり、内容は以下のようになります。
- A:取引実績も多くあり、取引拡大の余地もある
- B:実績は少ないが開拓できる可能性がある
- C:取引拡大できる余地が少ないため、現状維持優先
- D:ビジネスをする余地が少ない顧客
③クロスセル実行
優先順位のマッピングが終了しましたら、どの顧客から営業をしていくか決めて、クロスセルを実行していきます。定石としては、Aの顧客へアプローチをし、その後Bの顧客へアプローチをするという流れで進めていきます。
このアプローチをする顧客の選定は、とても重要になりますので、自社のリソースや時間などを計算しながら選定をしましょう。
よくある失敗例
ステップ②のマッピングをしない場合、取引実績が多く接触しやすいためCの顧客に行ってしまいますが、取引拡大の余地が少ないため売上を上げることができないでしょう。
お勧めのアクション
おすすめとしては、取引拡大をできる可能性が高いBの顧客をアプローチすることです。
ポテンシャルが高いものの実績が低い顧客は、別の商材で提案できる可能性がとてもとても高いです。
このステップを踏むことにより、以下のようなメリットにつながります。
- 営業活動の効率化することができる
- 顧客の優先順位により、最適なタイミングでアプローチをすることができる
- 顧客に沿った提案をすることができるため、LTVの向上に寄与できる
成功する鍵は「営業プロセスの管理」
営業活動をする上で、戦略立てと実行をしっかりと出来ている企業が多く存在しますが、成功する企業と失敗する企業に分かれてしまう要因はなんでしょうか?
主な成功の鍵は「営業プロセスの管理」と言えます。
仕組みづくりをする
仕組みづくりを徹底して行いましょう。
例えば、クロスセルに関しては、他部署との連携・定期的な接触・ヒアリング項目・アプローチなどの活動チェックなど、様々な部分で仕組みとして作ることができます。
このように、仕組みづくりをしましたら、組織全体の質を向上させることができ、営業の属人化を防ぐことができます。
参考:営業プロセスとは?営業属人化を防ぎ効率的に売上を向上させる方法
顧客を理解して、最適なクロスセルを実行しよう
クロスセルは、顧客単価を上げるために行う手法です。
BtoCでもBtoBでも活用できる手法となりますが、特にBtoBビジネスにおいては既存顧客から生まれる売上が全体の80%を占めていると言われております。
そのため、クロスセルをうまく活用することにより、新規開拓営業を行うよりも労力や時間・コストをかけずに売上向上を可能にできます。
クロスセルはいかに顧客を理解しているか
クロスセルを成功させるためには、いかに顧客を理解しているかという点がとても重要となります。
収集・把握している情報を分析し、自社の商材とどうマッチさせられるか、取引を拡大できるかを考えていきましょう。
下記の内容は最低でも把握しておいた方が良いです。
- 顧客が自社と同業界の商品・サービスを購買した総額
- 顧客の今後の投資・予算計画
- 顧客の来年度の計画や景気動向
- 顧客の決裁者情報
それ以外にももちろんありますが、最低限把握できる情報は集めておきましょう。
強引な営業では絶対に失敗する
何度も言うようですが、営業マン目線の強引な提案ではクロスセルを成功させることはできません。
顧客は営業マンが「自社をしっかり考え提案している」ことと「自社にメリットがある」ことであれば、受け入れやすくなります。そのためにも、しっかりと顧客と信頼関係を強くしておく必要があるのです。
今回の記事で、クロスセルを行う重要性を伝えられたかと思います。
そして、しっかりと準備をして行わなければ失敗すると言うこともご理解いただけらかと思います。
皆様も、クロスセルで顧客単価やLTVを上げていきましょう。