営業活動においても、マーケティング活動においても、顧客のニーズを見つけることはとても重要で、必要不可欠な要素となります。
実際に営業を行なっている営業マンであれば、ニーズを見つけようと、様々な観点からヒアリングを行ったり、こちらから提示したりしているかと思いますが、その方法が間違っていると顕在化したニーズしか見つけられないことが多いでしょう。
顕在ニーズも重要ですが、さらにその奥に抱えている潜在ニーズを引き出して、そのニーズに沿った提案やアプローチを行うことで、ビジネスはよりスピード感を持って進み始めます。
今回の記事では、営業活動・マーケティング活動においての潜在ニーズについて、顕在ニーズとの違い、ニーズの見つけ方・引き出し方について解説を行なっていきます。
実戦でも活用できる内容になりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
潜在ニーズ・顕在ニーズとは?
最初に、ニーズの種類について理解をしていきましょう。
それぞれについて解説を行なっていきます。
顕在ニーズとは?
顕在ニーズとは、顧客が自ら認知しているニーズを指しています。
例えば、ある明確な課題があり、その解決方法として特定の商品やサービスが欲しいと思っている状態です。そして、顧客自信がその認知しているニーズを満たすために行動をします。
ニーズは、よく氷山として例えられますが、顕在ニーズは氷山の一角となります。水面で確認ができている部分が顕在ニーズとなっております。
潜在ニーズとは?
反対に潜在ニーズは、顧客が認知していないニーズを指しています。認知していないものの、特定の欲求がある状態です。
前述のように氷山を例にすると、潜在ニーズに関しては水面からは確認できない部分に当たります。イメージすると分かりやすいのですが、水面に出ている一角より、水面下に存在する部分の方が大きなウェイトを占めております。
潜在ニーズは、顧客自信が認知していないニーズとなりますので、この潜在ニーズを見つけることはとても難しいのです。とある行動を行った際に不意に認知することもあれば、ずっと気づかないままのケースもあります。ただ、社外の営業活動やマーケティング活動で引き出されることがきっかけとなり、顕在化するケースも多いでしょう。
ウォンツとは?
急に出てきた言葉ですが、ニーズの他にウォンツというものがあります。
これらの構造を理解しておくことで、潜在ニーズを正確に理解できるようになるでしょう。
ニーズとは「目的」のことで、ウォンツは「手段」を指します。
ややこしく感じますが、例えば「眠気を覚ましたい」というのがニーズであり、「コーヒーを飲む」がウォンツとなります。
ただ、日常会話ではウォンツのみしか言わない場合が多いです。
上記の例で言えば、「コーヒー飲みたいな」はと言う人は想像できると思いますが、「眠気を覚ましたいから、コーヒー飲みたい」と言う人はあまりいないでしょう。
潜在ニーズ・顕在ニーズ・ウォンツの違いがわかる具体例
「コーヒーを飲みたい」を深く考えていく
それでは、前項で例としてあげた「コーヒーを飲みたい」を深く考えていきましょう。
例えば、会社員のAさんが、お昼休みをとった数時間後に資料作成をしている際に、眠気が襲ってきたとします。その際に「コーヒーを飲もう」と思ったAさんは、事務所近くの自動販売機で缶コーヒーを購入して、仕事をしながら飲みました。
この際の「コーヒーを飲みたい」という考えは、ウォンツとなります。
そして、「眠気覚ましをしたい」というのがニーズとなるでしょう。眠気を覚ますという目的のために、コーヒーを飲むという手段を考えたということです。
ただ、よく考えますとその眠気覚ましをしたいニーズを解決する方法は、缶コーヒーを飲むという方法以外にも、多く存在しています。
例えば、体を動かしたり、顔を冷水で洗ったり、外の空気を吸ったり、と違う手段でも眠気を覚ます方法はあるでしょう。
その為、Aさんのニーズが眠気を覚ますというものであれば、上記の行動はどれも手段となり得るのです。
潜在ニーズを深掘りしていく
では、続いて潜在ニーズについて深掘りを行っていきましょう。
潜在ニーズは、上記の例であげた「眠気を覚ましたい」という顕在化しているニーズとは違い、Aさんが認知できていないニーズです。
では、上記の例で行った「缶コーヒーを自動販売機で購入する」という行動について深掘りしてみましょう。
自動販売機に行き、常日頃購入している「ブラックコーヒー」を考えずに購入したとします。そのブラックコーヒーを購入する際には、何かしらの意思決定に基づき購入している為、ブラックコーヒーを購入したニーズが存在しております。では、そのニーズとは何になりますか?
「毎日購入しているから」などが考えられますが、ブラックコーヒーを選択した理由となっているでしょうか。そして、その理由がブラックコーヒーを購入するニーズとして顕在化していますか?分からないですよね。
このような、Aさん自身でも「なぜ購入したの?」と聞かれたら、明確な購入理由を言えない・分からない際は、その中に潜在ニーズが存在している可能性が高いです。
上記例のように、明確な理由はいえないものの、特定の行動を無意識のうちに行なっている場合、その無意識な行動の中にある理由や要因を「思考・創造」することが潜在ニーズとなります。
ブラックコーヒーを買った例で言いますと、「毎日買っているから味を知っているので不安にならない」→「購入することで失敗しない」等が潜在ニーズとなっている可能性が高いでしょう。
コーヒーですと、「この缶コーヒーは、他のコーヒーと比べ香りが高く、酸味も強いから好き」などといった選択する理由が明確出ない場合は、失敗しないからなどの安心感が要因となった行動の場合が多いでしょう。
市場や業界が成熟している場合、課題解決方法を提案するためには、顧客が認知しているニーズだけでなく、潜在ニーズをしっかりと見つけ出し、そのニーズに沿った提案を行なっていくことが必要となります。
潜在ニーズの見つけ方【基礎編】
前述で挙げた例である「眠気を覚ましたいからコーヒーが飲みたい」では、ウォンツとニーズを見つけることが簡単でした。
それは、一つのニーズに対して、一つのウォンツしかなかったからです。ただ、片方が一つでも、もう片方が複数の場合もありますし、何回も連鎖する場合もあります。
その為、顧客のニーズとウォンツをしっかりと整理して、ヒアリングを行う必要があります。冒頭でもお伝えした通り、ニーズが「目的」で、ウォンツが「手段」となります。
基本的には、顧客が発言した内容がウォンツと捉えて、そのウォンツに対して「どうして?」「なぜ?」「どういう目的で?」などといった質問を行い、ニーズを見つけていきます。
ウォンツを深掘りし、潜在ニーズを引き出す
前述でお伝えした、ウォンツに対して「なぜ?」などの質問を行い、潜在ニーズを見つける方法ですが、例を挙げて解説を行います。
例えば、「自電車が欲しい」という同僚がいたとします。
その潜在ニーズを見つけていきましょう。その際は、以下のような流れで見つけることができるでしょう。
- 自転車が欲しい→なぜ?
- 自転車通勤をしたいから→なぜ?
- 毎日の通勤で運動できるから→なぜ?
- 痩せたいから→なぜ?
- 異性にモテたいから→なぜ?
- 恋人が欲しいから→なぜ?
- いずれ結婚したいから→なぜ?
- 親に子供を見せたいから→なぜ?
- 恋人もいない自分を親がずっと心配しているから安心させたいから
上記の例は、すごく深掘りをしましたが、実際の営業活動やマーケティング活動でもこのようにヒアリングを行い、ウォンツを深く掘っていきます。
例を解説すると、初めはウォンツである「自転車が欲しい」しか把握しておりませんでした。ただ、深掘りをしていく内に、「モテたいから」という潜在ニーズを見つけることができ、さらに深く掘っていくと「親を安心させたい」という根底にあるニーズを引き出せました。
確かに、この例でいう一番上位にある潜在ニーズを解決する手段としては、「子供を見せる・結婚をする」などが良いかと思いますが、その下位のニーズである「モテたい」や「恋人が欲しい」に関しては、「自転車を購入する」以外にも手段は豊富にあります。
ですので、この同僚に何か営業をする場合は、「恋人を作る」という観点から、自転車通勤をしていくより現実的かつ効果的な方法を探し出し、提案をすると良いでしょう。
このように、ウォンツからヒアリングをしていくことで、大きな潜在ニーズを引き出すことができます。この潜在ニーズを引き出せるかどうかが今後の営業活動・マーケティング活動で勝ち残る為には必要なのです。
潜在ニーズの見つけ方のポイント【実践編】
それでは、基礎編をご理解いただけたかと思いますので、より実践的な内容をお伝えしていきます。
ヒアリングを行うゴールを決めておく
潜在ニーズを引き出すためのポイントとして、ヒアリングを行うゴールを明確に決めておくということです。
ヒアリング活動においてよく勘違いされることは、固定観念に囚われないようにゼロの状態からヒアリングをした方が良い、と考えていることです。どういうことかと言うと、相手のウォンツやニーズに対して事前に想定せず、目的やゴールも設定せずにヒアリングを行うということです。
この考えは、間違えておりますので注意しましょう。
どのような顧客にも、必ずウォンツやニーズ、課題は存在します。その為、しっかりと調査・分析・想定を行い、どのようにヒアリングを行っていくか・どこをヒアリングのゴールとして設定するかを決めてから、ヒアリングを行います。
そうでなければ、顕在化しているニーズすら掴めず終わってしまうでしょう。
ヒアリングの場面を想定する
続いての潜在ニーズを見つける際のポイントは、実際のヒアリングの場面を想定しておくと言うことです。
ヒアリングを行い潜在ニーズを引き出すために、どのような内容を質問するのか考えることが多いかと思いますが、その場を頭の中でイメージをして想定するところまで行った方がいいです。
たとえば、Aの質問をしたらこの顧客はBという回答をするため、B‘という質問を行うなど、実際にヒアリングを行っている場面を想定して、イメージトレーニングを行うということです。
さらに、他の営業マンや上司とロープレを行うことをお勧めします。自身でのイメージトレーニングでも、あらかじめその場を想定できますが、自分とは違う考え方や観点での質問をしてくれる他社と練習を行うことで、より実践的に想定をしていくことができます。
ただ、イメージトレーニングやロープレをしても、100%その通りになることはありません。ですが、それらの事前の想定を行なっていることで、想定外のことでも対応できるようになるのです。
ヒアリング時における2つの言葉をマスターする
ヒアリングを行う際にとても重宝する言葉が「要は…」と「例えば…」になります。
潜在ニーズを見つけるためには、基礎編でもお伝えした通り、「なぜ?」を繰り返し質問していき、深く掘り下げていく必要がありますが、実際に「なぜ?」しか聞いてこない営業マンがいたら、誘導尋問をされているようで良い気分にはなりません。
その為、顧客が回答したことに対して、「要は…」を使い抽象的に表現をしたり、「例えば…」を使い具体例を挙げた会話をしたりして、ヒアリングを行なっていくと良いでしょう。
顧客の言葉を抽象化する
「要は…」のように伝えることにより、顧客が回答した内容や発した言葉を抽象的に表現し、深掘りをすることができます。
例を挙げると、「要は、〇〇様は〜〜とお考えなのでしょうか?」や、「要するに〜〜を行なっていきたいという認識でお間違い無いでしょうか?」のように使います。
「要は…」の他にも、「要するに…」や「つまり」、「ということは」、「まとめますと」など、様々な言葉に言い換えることができますので、会話の引き出しとして持っておくと良いです。
顧客の言葉を具体化する
「例えば…」のように伝えることで、顧客の言葉を具体化することができます。
例えば、「〇〇様は価格を重視されているとおっしゃいましたが、例えば〜〜位をお考えですか?」や「例えば△△のような場面が想定できるのですがいかかでしょうか?」のように使います。
「例えば…」の他にも、「具体的に…」や「でしたら…」、「理由としては…」、「実際には…」などシーンに応じて使い分けていきましょう。
最後に
今回は、顧客の潜在ニーズについて解説を行ってきました。
潜在ニーズを見つけることは、至難の業です。優秀な営業マンでもできていないケースが多いです。
ただ、今回の記事を見ていただいたら、どのようなメカニズムでウォンツが発現しているのかが分かったかと思います。潜在ニーズを知るためには、必ずウォンツを知る必要があるため、ウォンツのメカニズムを理解してヒアリングをすると今までと違った視点で営業・マーケティング活動を行えるでしょう。
さらに、潜在ニーズを引き出すためには、経験が必要です。
どう質問をしていくのかだけでなく、ニーズや課題の想定をして取り組まなければなりませんので、日頃から身近な人のウォンツに対して潜在ニーズはなんだろう?と考えて行動してみると良いでしょう!